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help リーダーに追加 RSS 「筋弛緩剤事件控訴審判決公判」について

<<   作成日時 : 2006/03/23 21:28   >>

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モトケンさんのブログ記事「筋弛緩剤事件控訴審判決公判」について、思うところを述べたいと思う。

とはいえ、私のスタンスとしては、モトケンさんに賛成であり、モトケンさんのブログ記事に言いたいことはだいたい載っていることから、周辺的なことを述べる。


まず、刑事裁判における控訴審というものが、どういうものなのか、確認する必要がある。
 そもそも控訴審というのは、一審の裁判の続きをやる場でも一審の裁判のやり直しをする場でもないのです。
 一審の判断が正しいかどうかを点検・審査するというのが建前です(このような建前を事後審といいます)。
 言い方を変えますと、刑事裁判は一審(地裁)で充実した審理をしなさい、検察・弁護双方ともやれることは一審で全部やりなさい、ということです。

モトケンさんの説明は、さすがに元検さんだけあって、非常に理解しやすい。

弁護人あるいは被告人は、通常、「一審の判断は正しくない!」と思うから、控訴をする。
で、控訴をするのなら、当然、「ココとココが、こういう理由で正しくない!」ということを主張して、控訴審の裁判所にもう一度点検・審査してもらう必要がある。
そのために、控訴した当事者は、自らの主張を記載した控訴趣意書を、控訴審の裁判所に提出しなくてはならないことになっている。
刑事訴訟法376条1項
控訴申立人は、裁判所の規則で定める期間内に控訴趣意書を控訴裁判所に差し出さなければならない。

「差し出さなければならない」という表現に、カチンとくるのは私だけか。
それはそれとして、控訴趣意書というのは、教科書的に言うと、弁護人あるいは被告人が作成する控訴理由を記載した書面ということになる。
そして、控訴審は、当事者の一方である弁護人あるいは被告人の主張する控訴理由の存否を判断する手続になるため、控訴審の裁判所の義務的調査の範囲も原則として控訴趣意書に記載された事項に限られることになる。
刑事訴訟法392条1項
控訴裁判所は、控訴趣意書に包含された事項は、これを調査しなければならない。

控訴趣意書は非常に重要な書類であり、控訴裁判所が定めた控訴趣意書提出期限までに提出されないと、決定で控訴棄却となる。
刑事訴訟法386条1項
左の場合には、控訴裁判所は、決定で控訴を棄却しなければならない。
@ 第376条第1項に定める期間内に控訴趣意書を差し出さないとき。

「決定で」というのは、公判を開かずに裁判官だけでやれちゃうということ。
条文上は、「しなければならない」と義務的規定になっている。
ちなみに、麻原こと松本被告の裁判で、問題となっているのは、まさに、この条文である。

控訴趣意書が提出期限内に提出されれば、公判期日が開かれる。
刑事訴訟法389条
公判期日には、検察官及び弁護人は、控訴趣意書に基づいて弁論をしなければならない。

控訴審の公判期日には、まず最初に、弁護人が、あらかじめ提出してあった控訴趣意書に基づき、控訴理由について弁論することになる。
通常は、弁護人が「控訴趣意書記載のとおりである。」と述べておしまい。
ここで弁論したら、後述の新たな事実の取調べが行われた場合を除き、弁護人に弁論を認める規定はない。

控訴裁判所は、控訴趣意書に記載された事項については、上述のとおり調査義務があるので、ます控訴趣意書を読んで、一審の訴訟記録を精査し、一審の証拠を吟味して、一審判決の当否を検討する。
だから、この調査だけで、一審判決の当否が判断できる場合には、直ちに原判決破棄にしろ控訴棄却にしろ、裁判をすることになる。
この調査だけでは一審判決の当否を判断できない場合に、事実の取調べ、すなわち、一審の訴訟記録や証拠以外の新たな資料を取り調べて、事実の存否を判断することになる(393条1項2項)。

刑事訴訟法の控訴審の構造を踏まえると、モトケンさんの以下の記述は、ごもっともと思います。
 その観点で本件を見てみますと、仙台地裁の一審は2001年7月11日の第一回公判から2004年3月30日の判決公判まで約2年9カ月が費やされ、その間、証拠調べ期日が150回近く開かれています。
 これはかなり充実した審理が一審で行われたと言っていいでしょう。

 そして控訴審は期日こそ4回程度しか開かれていないようですが、1審の判決から2年近くが経過しており、その間仙台高裁において膨大な訴訟記録を精査していたものと考えられますから、仙台高裁の審理は必ずしも拙速とは言えないと思います。

そして、仙台高裁は、判決を出したのでしょう。

今回、被告人は、控訴審の法廷で、意見陳述を認められませんでした。
刑事訴訟法388条
控訴審では、被告人のためにする弁論は、弁護人でなければ、これをすることができない。

控訴審では、被告人は、法律上自ら弁論することはできないことになっています。
さらに、これについては、三省堂の模範六法に、こんな判例が載っています。
控訴審は一審判決の事実点ならびに法律点に対する事後審査の手続である。被告人に被告事件について陳述する機会を認める291条2項は性質上控訴審に準用されない。被告人が出廷している場合に、裁判所が認めてなす質問に対し任意に供述できるにとどまる。(最決昭26.3.30)

これも、控訴審の事後審という性格に由来します。

ちなみに。
390条
控訴審においては、被告人は、公判期日に出頭することを要しない。以下略


モトケンさんは、控訴審において、弁護人が退廷したことについて、こう述べられております。
 私は、弁護人はどんな事情があっても自ら退廷してはいけないと思います。
 裁判というものは、法廷で行われたことしか意味を持ちません。
 自ら退廷するということは、戦線離脱であり職場放棄であり、弁護の責務の放棄だと考えています。
 弁護人としては、裁判長の判断に対する抗議としての退廷であったようですが、こんなものは私に言わせれば、何の意味もない、場合によっては被告人に不利益になりかねない、単なるパフォーマンスです。
プロ野球で、監督が審判の判定に抗議して試合をボイコットするのとは訳が違います。

 弁護人は、最後まで裁判所を説得する努力を続けなければならない。
 退廷してしまっては説得も何もありません。

私も、自ら退廷することは、ダメだと思います。
ただ、こんなこと言っちゃいけませんが、裁判所を説得するなんて、非常に虚しさと、無力感を感じる作業です。
弁護士誰もが思うことでしょう。

 裁判官と喧嘩しても始まらないと思います。
 裁判官は法廷の独裁者なのですから。

裁判所は、刑事訴訟法上、広範かつ強力な訴訟指揮権をもっております。
しかも、刑事訴訟法上、控訴審というのは、かなりできることが限定されている手続です。

怒って退廷しても、懲役に行くのは弁護人ではありません。
麻原こと松本被告の控訴趣意書問題のときも思いました。
控訴趣意書を提出しないことにより控訴審での審理の機会を奪われ死刑が確定するのは弁護人ではなく、松本被告である。

今回の件は、幸い、詳細な控訴趣意書が提出されていたのでしょう。
上告審につながります。

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コメント(1件)

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エントリーの紹介ありがとうございます。

>ただ、こんなこと言っちゃいけませんが、裁判所を説得するなんて、非常に虚しさと、無力感を感じる作業です。
>弁護士誰もが思うことでしょう。

 私もそう思います。
 聞く耳を持たない頑迷な裁判官に絶望感を感じたことは1回や2回ではありません。

 しかし、説得の努力を続けるしかないですね。
 その事件では結果に繋がらなくても、同じことを何人もの弁護士が何回も言えば、何かが少しは変わるかもしれません。
モトケン
URL
2006/03/23 21:52

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