この事件の弁護人の主張については、いろんな意見があるだろう。山口・光の母子殺害:元少年側「傷害致死」 検察側「死刑が相当」−−差し戻し審この事件を高等裁判所に差し戻した最高裁判所は、判決でこう述べている。 なお,弁護人安田好弘,同足立修一は,当審弁論及びこれを補充する書面において,原判決が維持した第1審判決が認定する各殺人,強姦致死の事実について,重大な事実誤認がある旨を指摘する。最高裁判所は、殺人罪の成立については、動機・犯意の生じた時期・態様等も含め、「揺るぎなく認めることができる」とまで、言い切っている。 一切事実誤認はない、ということだ。 そのうえで、量刑について、最高裁判所は本件では死刑が相当であると判断したうえで、無期懲役を言い渡した高等裁判所の判決について、こう述べている。 そうすると,原判決は,量刑に当たって考慮すべき事実の評価を誤った結果,死刑の選択を回避するに足りる特に酌量すべき事情の存否について審理を尽くすことなく,被告人を無期懲役に処した第1審判決の量刑を是認したものであって,その刑の量定は甚だしく不当であり,これを破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。最高裁判所は、本件の裁判記録を精査したところ、この事件の量刑は死刑であると判断した。 ただ、敢えて死刑を回避するに値する何か特別の事情あるかを、高等裁判所で審理を尽くしなさいとした。 これは、本件が死刑という一度執行されてしまうと後から取り返しのつかない刑罰を科す事件であること、また、本件の被告人が犯行時に少年だったという点を配慮して、死刑にするのであれば、より慎重に判断すべきであるという態度だと思う。 最高裁判所は、高等裁判所では「本件において死刑の選択を回避するに足りる特に酌量すべき事情があるかどうかにつき更に慎重な審理」をしろと、高等裁判所での審理の対象を限定している。 差戻後の高等裁判所での弁護人の主張立証も、最高裁判所の差戻理由に沿った形で行わないと、最終的には、判決では一顧だにされず、「おしまい」となる可能性がある。 ま、そんなことは、経験豊富な弁護人らは百も承知だろう。 なのに、敢えてしている。 ちなみに、報道機関は、こうした視点での分析はしない。 弁護人の主張内容を、奇異なものとして、おもしろおかしく伝えるだけだ。 ワイドショーなどでのコメンテーターも、弁護人の主張の内容の奇異さについての批判が多い。 私は、なぜ弁護人らが、今回、このような主張を、敢えて行ったのか非常に興味がある。 現時点では、まだ初公判の段階なので、そこらへんの事情は、明らかでない。 私も、こんなに世間の注目を集める事件ではないが、荒唐無稽な無罪主張を2度ばかりしたことがある。 そこらへんの苦労は、以前「無罪の主張」で述べたことがある。 接見の際に被告人と何度も話し合い、被告人の主張は認められる可能性はゼロであること、かえって事実上被告人に不利な量刑事情とされる可能性があること、等を説明しても、被告人が首を縦に振らなければ、弁護人は被告人に従わざるをえない。 被告人が無罪だと主張をしているのに、弁護人がそれを無視して有罪の意見を述べたら、懲戒確実だ。 そうはいっても、被告人の無理な無罪の主張を、法的に筋の通った形に組み立てるというのは、本当に難儀する。 誰がどう見ても、非常に苦しい主張になったりする。 傍聴人からは、「あの弁護人は馬鹿だ。」と思われても仕方ない(検察官はその被告人を取調べたりしてるので、「大変ですねぇ。」という表情をしてくれる。)。 それでも、弁論の際には、無罪主張を前提としつつも、量刑上被告人に有利となる事情を最大限に織り交ぜ(被告人が本当に無罪なら量刑についての事情を述べる必要はない。)、被告人の利益には配慮をする。 結局、いずれの事件も有罪で、しかも実刑になったので、どんなに量刑で被告人が有利に扱われていても(求刑よりもはるかに刑期が軽くなっていても)、被告人には悪態をつかれておしまいだった。 本件では、最高裁判所の判決文を読む限り、差戻審の高等裁判所で、弁護人が普通の主張をしても、ってゆうか何をどう主張しても、死刑の回避は極めて難しいだろう。 刑事弁護人というのは、時として非常に過酷な仕事であり、場合によっては(例えばの話だが)、脅迫状やら嫌がらせの電話やら、場合によってはカミソリの刃やら、さらに場合によっては寿司の出前100人前が事務所に届いたりしながら、また、日本中から馬鹿だアホだ非常識だと総スカンを食うのを分かっていながら、被告人の主張をしなければならないときがある。 本件でも、安田弁護士あての脅迫状が日弁連に送りつけられている。 弁護人としては、全国民を敵に回しても、被告人の利益のために仕事をするのが義務だ。 被告人から依頼を受けた私選弁護人だろうと、国から選任された国選弁護人だろうと、その点に差異はない。 弁護人らは、この主張が、この裁判にどのような効果があるか、理解していると思う。 ただ、私は、裁判記録や証拠を自分の目で見たわけではないし、被告人と接見したわけでもない。 報道の内容をすべて正しいとすることも、できない。 そうはいっても、20人もの弁護人が集まって、もの凄い世間からのプレッシャーを受けながら出した結論がこの主張だから、これしかないんだろうなと思う。 (ま、この期に及んで、「犯人は別にいます。」などと主張したら、裁判所から「それはないしょ。」と言われるかもしれんがね。) 弁護人の主張は大バッシングを受けているようだが、報道や報道によって喚起された世論によって、弁護人がコロッと主張を変えたりしたら、それはそれでおかしい。 上記の毎日新聞の記事によれば、弁護人らは『精神科医らの鑑定結果から「二人の殺害は予想外の事態」と主張』しているとされている。 もともと弁護人というのは、被告人本人の主張に基づいて裁判を進めるが、本件では、弁護人以外にも、精神科医らが被告人と面会し、被告人から話を聞き、私的鑑定を行い、「二人の殺害は予想外の事態」という鑑定結果がでているということだ。 弁護人らは、この鑑定結果に基づいて主張をしていると思われるが、なぜ弁護人ばかりに批難が集中するのだろう。 ただ、私は、私的鑑定を行った精神科医らも批難しろと言うつもりはない。 精神科医らだって、被告人と現実に面会したうえで、被告人とのやり取りした内容に基づいて、医師としての職業的良心にのっとり真摯に鑑定結果をだしているのだろう。 今は、まだ控訴審が始まったばかりで、弁護人の主張ばかりが一人歩きしているが、今後、私的鑑定の内容の吟味(場合によっては精神科医の証人尋問)や被告人質問を通じて、どのような展開になるのか注視したい。 なお、これは本件についてということではないが、刑事事件をやっていると、起訴後に、被告人が「私は責任能力に問題がある被告人」という状態に「なる」ことは、ないことではない。 当初は弁護人と普通に意思疎通ができていたものが、途中からおかしなことを言い出すことはある。 身柄拘束による拘禁症状により本当におかしくなる場合もあるし、同房者に入れ知恵されたりしておかしくなる場合もある。 ただ、被告人がどうしても不可解な主張をするのなら、弁護人としては、そのまま法廷に伝えるしかない。 「被告人は不可解なことを言っているが、弁護人としては詐病と思う。」などと言ったら、これまた懲戒もんだ。 ちなみに、私は、安田弁護士らが最高裁の弁論を欠席した点については、許されるべきではなく、厳しく懲戒すべきだと思っている。 「弁護士会できちっとした調査をしてもらいたい」 |
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| タイトル (本文) | ブログ名/日時 |
|---|---|
テレビの影響かねぇ。
中日新聞から。 ...続きを見る |
PINE's page 2007/06/20 23:11 |
光市母子殺人事件差戻審判決について
私は、以前、「光市母子殺人事件差戻審について」というエントリで、以下のとおりコメントした。 ...続きを見る |
PINE's page 2008/04/24 20:34 |
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
|---|---|
>(検察官はその被告人を取調べたりしてるので、「大変ですねぇ。」という表情をしてくれる。)。 |
とんぼ 2007/06/12 16:02 |
遺体の鑑定書によりますと、首を絞めた痕はないので、検察の主張は間違いだとあります。 |
マーボ 2007/06/23 08:29 |
忘れてました。 |
マーボ 2007/06/23 19:33 |
割り切った裁判官であれば、(検察官が不同意にした場合)私的精神鑑定書も証拠採用しないかもしれません。 |
PINE 2007/06/23 22:21 |
弁護団恥を知れ。報酬を得るためには正義をすてるのか?もし自分の主義による行動であるなら事実をまげるな!自分たちの名前と顔をすべて公表しろ。それができないなら偽善者の集団と思わざるを得ないだろう。偽善者のヒューマニズムは胸くそが悪い。 |
リョウ 2007/06/26 22:27 |
マーボさんが言われている鑑定書とは、上野先生が書かれたものですね。 |
TMA 2007/06/28 19:19 |
追記です。 |
TMA 2007/06/28 21:37 |
もし、母親に甘えたい気持ちで抱きついた云々という主張が通用するなら、これから痴漢行為で訴えられた者は、皆そのように主張するでしょうね。 |
nabe 2007/06/28 22:33 |
死刑が妥当だ |
青島 2007/11/06 14:08 |
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