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<<   作成日時 : 2007/06/12 14:35   >>

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この事件の弁護人の主張については、いろんな意見があるだろう。

山口・光の母子殺害:元少年側「傷害致死」 検察側「死刑が相当」−−差し戻し審
 ◇差し戻し審・初公判

 山口県光市で99年、母子を殺害したとして、殺人や強姦(ごうかん)致死罪などに問われた当時18歳の元少年(26)の差し戻し審初公判が24日、広島高裁(楢崎康英裁判長)であった。弁護側は、殺意や強姦目的はなく、傷害致死罪に当たると主張。従来通り死刑相当を主張する検察側と全面的に争う構えを見せた。

 無期懲役判決だった1、2審では、弁護側は起訴事実を争わなかった。しかし、最高裁で弁論が開かれ判決見直しの可能性が高くなると、弁護側は「殺意はなかった」と主張を変更。最高裁は昨年6月、「量刑は不当」などとして2審判決を破棄、審理を同高裁に差し戻しており、死刑の可能性は高い。少年法は、18歳未満の被告に死刑を科すことを禁じており、事件当時18歳と30日だった元少年に対する死刑適用の是非が注目される。

 1、2審判決によると、元少年は99年4月14日、光市の会社員、本村洋さん(31)方で、妻弥生さん(当時23歳)を強姦目的で襲い、抵抗されたため首を絞め殺害。泣き続けていた長女夕夏ちゃん(同11カ月)を床にたたきつけたうえ絞殺した。

 弁護側は、独自に行った法医鑑定から殺意を否定。「弥生さんについては、騒がれたため口をふさいだら誤って首を押さえ続け窒息死させた。夕夏ちゃんについては、泣きやまないので首にひもをまいて、蝶々(ちょうちょう)結びにしたら、死んでしまった」などと傷害致死罪を主張。強姦目的についても「被害者に中学1年の時に自殺した母親を重ね、甘える思いで抱きついた」などと否定した。

 検察側は「社会に及ぼした影響は深甚で、真摯(しんし)な反省もうかがえず、矯正可能性があるとの判断は根拠に欠ける」などと訴えた。【大沢瑞季】

 ◇「妻と娘は何とあわれか…」

 「反省の態度は皆無」「自白調書は信用できない」。妻子を失った本村洋さん(31)は傍聴席で、殺害を「偶発的な行為」とする弁護側の主張に唇をかみ、強く遺影を抱きしめた。

 元少年(26)はベージュのズボンに水色のチェックのシャツで法廷に姿を見せた。本村さんとは約5年2カ月ぶりの対面だが、最後まで目を合わせることはなかった。

 20人近い弁護団は、精神科医らの鑑定結果から「二人の殺害は予想外の事態」と主張。妻弥生さん殺害について「母に対する人恋しさに起因する母胎回帰」と論じた。

 「あんな話は聞かせたくなかった。私の妻と娘は何とあわれか……」。閉廷後に会見した本村さんは怒りを抑えるように冷静な口調で語った。そして「審理を混乱させないでほしい」と語気を強めた。【安部拓輝、内田久光】

毎日新聞 2007年5月25日 東京朝刊
この事件を高等裁判所に差し戻した最高裁判所は、判決でこう述べている。
 なお,弁護人安田好弘,同足立修一は,当審弁論及びこれを補充する書面において,原判決が維持した第1審判決が認定する各殺人,強姦致死の事実について,重大な事実誤認がある旨を指摘する。
 しかし,その指摘は,他の動かし難い証拠との整合性を無視したもので失当であり,本件記録によれば,弁護人らが言及する資料等を踏まえて検討しても,上記各犯罪事実は,各犯行の動機,犯意の生じた時期,態様等も含め,第1,2審判決の認定,説示するとおり揺るぎなく認めることができるのであり,指摘のような事実誤認等の違法は認められない。
最高裁判所は、殺人罪の成立については、動機・犯意の生じた時期・態様等も含め、「揺るぎなく認めることができる」とまで、言い切っている。
一切事実誤認はない、ということだ。
そのうえで、量刑について、最高裁判所は本件では死刑が相当であると判断したうえで、無期懲役を言い渡した高等裁判所の判決について、こう述べている。
 そうすると,原判決は,量刑に当たって考慮すべき事実の評価を誤った結果,死刑の選択を回避するに足りる特に酌量すべき事情の存否について審理を尽くすことなく,被告人を無期懲役に処した第1審判決の量刑を是認したものであって,その刑の量定は甚だしく不当であり,これを破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。
(中略)

 よって,刑訴法411条2号により原判決を破棄し,本件において死刑の選択を回避するに足りる特に酌量すべき事情があるかどうかにつき更に慎重な審理を尽くさせるため,同法413条本文により本件を原裁判所に差し戻すこととし,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
最高裁判所は、本件の裁判記録を精査したところ、この事件の量刑は死刑であると判断した。
ただ、敢えて死刑を回避するに値する何か特別の事情あるかを、高等裁判所で審理を尽くしなさいとした。
これは、本件が死刑という一度執行されてしまうと後から取り返しのつかない刑罰を科す事件であること、また、本件の被告人が犯行時に少年だったという点を配慮して、死刑にするのであれば、より慎重に判断すべきであるという態度だと思う。

最高裁判所は、高等裁判所では「本件において死刑の選択を回避するに足りる特に酌量すべき事情があるかどうかにつき更に慎重な審理」をしろと、高等裁判所での審理の対象を限定している。
差戻後の高等裁判所での弁護人の主張立証も、最高裁判所の差戻理由に沿った形で行わないと、最終的には、判決では一顧だにされず、「おしまい」となる可能性がある。
ま、そんなことは、経験豊富な弁護人らは百も承知だろう。
なのに、敢えてしている。

ちなみに、報道機関は、こうした視点での分析はしない。
弁護人の主張内容を、奇異なものとして、おもしろおかしく伝えるだけだ。
ワイドショーなどでのコメンテーターも、弁護人の主張の内容の奇異さについての批判が多い。

私は、なぜ弁護人らが、今回、このような主張を、敢えて行ったのか非常に興味がある。
現時点では、まだ初公判の段階なので、そこらへんの事情は、明らかでない。

私も、こんなに世間の注目を集める事件ではないが、荒唐無稽な無罪主張を2度ばかりしたことがある。

そこらへんの苦労は、以前「無罪の主張」で述べたことがある。

接見の際に被告人と何度も話し合い、被告人の主張は認められる可能性はゼロであること、かえって事実上被告人に不利な量刑事情とされる可能性があること、等を説明しても、被告人が首を縦に振らなければ、弁護人は被告人に従わざるをえない。
被告人が無罪だと主張をしているのに、弁護人がそれを無視して有罪の意見を述べたら、懲戒確実だ。

そうはいっても、被告人の無理な無罪の主張を、法的に筋の通った形に組み立てるというのは、本当に難儀する。
誰がどう見ても、非常に苦しい主張になったりする。
傍聴人からは、「あの弁護人は馬鹿だ。」と思われても仕方ない(検察官はその被告人を取調べたりしてるので、「大変ですねぇ。」という表情をしてくれる。)。
それでも、弁論の際には、無罪主張を前提としつつも、量刑上被告人に有利となる事情を最大限に織り交ぜ(被告人が本当に無罪なら量刑についての事情を述べる必要はない。)、被告人の利益には配慮をする。

結局、いずれの事件も有罪で、しかも実刑になったので、どんなに量刑で被告人が有利に扱われていても(求刑よりもはるかに刑期が軽くなっていても)、被告人には悪態をつかれておしまいだった。

本件では、最高裁判所の判決文を読む限り、差戻審の高等裁判所で、弁護人が普通の主張をしても、ってゆうか何をどう主張しても、死刑の回避は極めて難しいだろう。

刑事弁護人というのは、時として非常に過酷な仕事であり、場合によっては(例えばの話だが)、脅迫状やら嫌がらせの電話やら、場合によってはカミソリの刃やら、さらに場合によっては寿司の出前100人前が事務所に届いたりしながら、また、日本中から馬鹿だアホだ非常識だと総スカンを食うのを分かっていながら、被告人の主張をしなければならないときがある。
本件でも、安田弁護士あての脅迫状が日弁連に送りつけられている。

弁護人としては、全国民を敵に回しても、被告人の利益のために仕事をするのが義務だ。
被告人から依頼を受けた私選弁護人だろうと、国から選任された国選弁護人だろうと、その点に差異はない。

弁護人らは、この主張が、この裁判にどのような効果があるか、理解していると思う。
ただ、私は、裁判記録や証拠を自分の目で見たわけではないし、被告人と接見したわけでもない。
報道の内容をすべて正しいとすることも、できない。
そうはいっても、20人もの弁護人が集まって、もの凄い世間からのプレッシャーを受けながら出した結論がこの主張だから、これしかないんだろうなと思う。
(ま、この期に及んで、「犯人は別にいます。」などと主張したら、裁判所から「それはないしょ。」と言われるかもしれんがね。)

弁護人の主張は大バッシングを受けているようだが、報道や報道によって喚起された世論によって、弁護人がコロッと主張を変えたりしたら、それはそれでおかしい。

上記の毎日新聞の記事によれば、弁護人らは『精神科医らの鑑定結果から「二人の殺害は予想外の事態」と主張』しているとされている。
もともと弁護人というのは、被告人本人の主張に基づいて裁判を進めるが、本件では、弁護人以外にも、精神科医らが被告人と面会し、被告人から話を聞き、私的鑑定を行い、「二人の殺害は予想外の事態」という鑑定結果がでているということだ。
弁護人らは、この鑑定結果に基づいて主張をしていると思われるが、なぜ弁護人ばかりに批難が集中するのだろう。

ただ、私は、私的鑑定を行った精神科医らも批難しろと言うつもりはない。
精神科医らだって、被告人と現実に面会したうえで、被告人とのやり取りした内容に基づいて、医師としての職業的良心にのっとり真摯に鑑定結果をだしているのだろう。

今は、まだ控訴審が始まったばかりで、弁護人の主張ばかりが一人歩きしているが、今後、私的鑑定の内容の吟味(場合によっては精神科医の証人尋問)や被告人質問を通じて、どのような展開になるのか注視したい。

なお、これは本件についてということではないが、刑事事件をやっていると、起訴後に、被告人が「私は責任能力に問題がある被告人」という状態に「なる」ことは、ないことではない。
当初は弁護人と普通に意思疎通ができていたものが、途中からおかしなことを言い出すことはある。
身柄拘束による拘禁症状により本当におかしくなる場合もあるし、同房者に入れ知恵されたりしておかしくなる場合もある。
ただ、被告人がどうしても不可解な主張をするのなら、弁護人としては、そのまま法廷に伝えるしかない。
「被告人は不可解なことを言っているが、弁護人としては詐病と思う。」などと言ったら、これまた懲戒もんだ。

ちなみに、私は、安田弁護士らが最高裁の弁論を欠席した点については、許されるべきではなく、厳しく懲戒すべきだと思っている。
「弁護士会できちっとした調査をしてもらいたい」

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コメント(9件)

内 容 ニックネーム/日時
>(検察官はその被告人を取調べたりしてるので、「大変ですねぇ。」という表情をしてくれる。)。
あはは。

>求刑よりもはるかに刑期が軽くなっていても)、被告人には悪態をつかれておしまいだった。

やるせないお仕事ですねえ。
とんぼ
2007/06/12 16:02
遺体の鑑定書によりますと、首を絞めた痕はないので、検察の主張は間違いだとあります。
http://www.k4.dion.ne.jp/~yuko-k/kiyotaka/column10-kantei.htm
傷害致死という主張はもっともではないでしょうか。
ところが最高裁は「その指摘は,他の動かし難い証拠との整合性を無視したもの」と言っています。
最高裁はわずかな時間で弁論書をちゃんと読んだのか、証拠をきちんと調べたのか疑問です。

また、安田弁護士が最高裁を欠席したのは、弁護人を引受けて弁論の期日まで2週間しかなかったわけですし、延期の申請を却下されたわけですから、やむを得なかったと思います。
http://www.miyazakimanabu.com/judicial/000170.php
最高裁はとにかく死刑にしたいだけのことだろうと思います。
マーボ
2007/06/23 08:29
忘れてました。
追加です。
遺体の鑑定書や鑑定医は証拠、証人として採用されないかもしれません。
弁護団としては精神鑑定、心理鑑定を証拠とすることによって遺体の鑑定書と検察の主張との食い違いを明らかにしたいという狙いがあるのでは、というのが私の考えです。
いかがでしょうか。
マーボ
2007/06/23 19:33
割り切った裁判官であれば、(検察官が不同意にした場合)私的精神鑑定書も証拠採用しないかもしれません。
PINE
2007/06/23 22:21
弁護団恥を知れ。報酬を得るためには正義をすてるのか?もし自分の主義による行動であるなら事実をまげるな!自分たちの名前と顔をすべて公表しろ。それができないなら偽善者の集団と思わざるを得ないだろう。偽善者のヒューマニズムは胸くそが悪い。
リョウ
2007/06/26 22:27
マーボさんが言われている鑑定書とは、上野先生が書かれたものですね。
その鑑定書は、日付から判断すると死体解剖の鑑定書ではなく、裁判所に提出済みである死体の実況見分調書と司法解剖の鑑定書を見て、上野先生が法医学者としての意見を述べたものという意見が主流です。
私が調べた範囲では、実況見分調書は甲6号証、司法解剖の鑑定書は甲9号証として裁判所に提出されているようです。
TMA
2007/06/28 19:19
追記です。
別の法医学者が鑑定を行ったら、違う結論が出る可能性もあるのでは?
医師の中にこの鑑定結果を否定する人もいるようです。
TMA
2007/06/28 21:37
もし、母親に甘えたい気持ちで抱きついた云々という主張が通用するなら、これから痴漢行為で訴えられた者は、皆そのように主張するでしょうね。

いじめでクラスメートを殺しても、押入れに遺体を動かして、ドラえもんが・・・と言えばいい。

裁判所は、世間にこんな奇妙な免罪符を与えるはずがない、と信じたい。
nabe
2007/06/28 22:33
死刑が妥当だ
青島
2007/11/06 14:08

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