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help リーダーに追加 RSS 光市母子殺人事件差戻審判決について

<<   作成日時 : 2008/04/24 20:27   >>

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私は、以前、「光市母子殺人事件差戻審について」というエントリで、以下のとおりコメントした。

この事件を高等裁判所に差し戻した最高裁判所は、判決でこう述べている。
 なお,弁護人安田好弘,同足立修一は,当審弁論及びこれを補充する書面において,原判決が維持した第1審判決が認定する各殺人,強姦致死の事実について,重大な事実誤認がある旨を指摘する。
 しかし,その指摘は,他の動かし難い証拠との整合性を無視したもので失当であり,本件記録によれば,弁護人らが言及する資料等を踏まえて検討しても,上記各犯罪事実は,各犯行の動機,犯意の生じた時期,態様等も含め,第1,2審判決の認定,説示するとおり揺るぎなく認めることができるのであり,指摘のような事実誤認等の違法は認められない。
最高裁判所は、殺人罪の成立については、動機・犯意の生じた時期・態様等も含め、「揺るぎなく認めることができる」とまで、言い切っている。
一切事実誤認はない、ということだ。
そのうえで、量刑について、最高裁判所は本件では死刑が相当であると判断したうえで、無期懲役を言い渡した高等裁判所の判決について、こう述べている。
 そうすると,原判決は,量刑に当たって考慮すべき事実の評価を誤った結果,死刑の選択を回避するに足りる特に酌量すべき事情の存否について審理を尽くすことなく,被告人を無期懲役に処した第1審判決の量刑を是認したものであって,その刑の量定は甚だしく不当であり,これを破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。
(中略)

 よって,刑訴法411条2号により原判決を破棄し,本件において死刑の選択を回避するに足りる特に酌量すべき事情があるかどうかにつき更に慎重な審理を尽くさせるため,同法413条本文により本件を原裁判所に差し戻すこととし,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
最高裁判所は、本件の裁判記録を精査したところ、この事件の量刑は死刑であると判断した。
ただ、敢えて死刑を回避するに値する何か特別の事情あるかを、高等裁判所で審理を尽くしなさいとした。
これは、本件が死刑という一度執行されてしまうと後から取り返しのつかない刑罰を科す事件であること、また、本件の被告人が犯行時に少年だったという点を配慮して、死刑にするのであれば、より慎重に判断すべきであるという態度だと思う。

最高裁判所は、高等裁判所では「本件において死刑の選択を回避するに足りる特に酌量すべき事情があるかどうかにつき更に慎重な審理」をしろと、高等裁判所での審理の対象を限定している。
差戻後の高等裁判所での弁護人の主張立証も、最高裁判所の差戻理由に沿った形で行わないと、最終的には、判決では一顧だにされず、「おしまい」となる可能性がある。
ま、そんなことは、経験豊富な弁護人らは百も承知だろう。
なのに、敢えてしている。

今回、差戻審の判決では、以下のように述べている。
 当裁判所は上告審判決を受け、死刑の選択を回避するに足りる特に酌量すべき事情の有無について慎重に審理したものの、基本的な事実関係については、上告審判決の時点と異なるものはなかったといわざるを得ない。むしろ、被告人が、当審公判で、虚偽の弁解を弄し、偽りとみざるを得ない反省の弁を口にしたことにより、死刑の選択を回避するに足りる特に酌量すべき事情を見いだす術もなくなったというべきである。今にして思えば、上告審判決が、「弁護人らが言及する資料などを踏まえて検討しても、上記各犯罪事実は、各犯行の動機、犯意の生じた時期、態様なども含め、第1、2審判決の認定、説示するとおり揺るぎなく認めることができるのであって、指摘のような事実誤認などの違法は認められない」と説示したのは、被告人に対し、本件各犯行について虚偽の弁解を弄することなく、その罪の深刻さに真摯(しんし)に向き合い、反省を深めるとともに、真の意味での謝罪と贖罪(しょくざい)のためには何をすべきかを考えるようにということをも示唆したものと解されるところ、結局、上告審判決のいう「死刑の選択を回避するに足りる特に酌量すべき事情」は認められなかった。
そして、本村さんの記者会見では、以下のような発言があった。
 最後まで事実を認めて、誠心誠意反省の弁を述べてほしかった。そうすれば死刑は回避されたかもしれない。なぜ遺族感情を逆なでして彼がああいった供述をしたのか。まだ謝罪の気持ちがあるなら、差し戻し審でうその供述をしたんであれば正直に述べてほしい。
本村さんも、よく理解しているのだ。

最高裁判所は、被告人の行った犯罪事実について、敢えて「揺るぎなく」という修飾までつけて、「認めることができる」としていた。
そして、最高裁判所は、揺るぎなく認められる事実を前提に、量刑事情として、「死刑の選択を回避するに足りる特に酌量すべき事情」の有無の審理を広島高等裁判所に求めたのだ。

だが、広島高等裁判所では、差戻審の審理の結果、「死刑の選択を回避するに足りる特に酌量すべき事情を見いだす術もなくなった」のである。
私は、「術もなくなった」という表現に、なんというか、広島高等裁判所の悔しさのようなものを感じた。
「死刑の選択を回避するに足りる特に酌量すべき事情」がないか真摯に探そうとしたのに、その「術」がなくなったのである。

私が司法試験を受験していたころ、こういう受験指導の言葉を、よく耳にした。
「問いに答えていない答案は、不合格答案だ。」

ま、被告人が自ら行ったことの結果は、自らにかかってくる。
被告人が自分が言いたかったことを法廷ですべて言えたのなら、せめて良かったのではないか。


刑事事件・・・・。

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